はらっぱ日記

里山・はらっぱ育ちのもーちゃんです

"詩"を読んでいる

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〈息子たちから私に一足早い誕生日プレゼント。かわいいデザインの白いブラウス♪  こらっ、レオ触らないで!〉


詩人の岸本康弘さん(昔の少しだけの知人)が、彼の作品の集大成として、昨年全詩集を出版された。知人から新聞記事を見せてもらって知った。今82才になっておられる。

彼の初期の詩集「人間やめんとこ」(35才の時)を読んでいる。

その中のひとつ。

・・・・・


   きばって行こか


ひ弱い二人やけど   仲よう歌えば青空へようひびきよるな   おまはん

キスも下手やし   ツギあてズボンがわびしいてかいな

自分のオリジナルで進むこっちゃ

つまらん真似ばっかりしてたら

大事な生命(いのち)がすり減るばっかしや

見てみ

蛇がのたうちながら皮を脱ぎよる

葉陰で蝉が殻から出ようとしてるし

大木でもしじゅう葉っぱを散らしよう

おいらももっとでかい殻を脱いでいかんと

宇宙の膨張とかいうもんに呼吸を合わせていけんようになるんや

遠い日の納戸の匂いをさせて鬚づらの息子へ好物を作ってるおふくろは

ほんまに泣けてしまうけど

彼女はもうおれの抜け殻かもしれん

幼い日

足を悪うしたおれは

広い野原で歩行練習してたんや

歩みがおそうても   踵をひきずっても

ながーい足あとができとった

その清々しい足あとが   今でも追いかけて来よる

おまはん   あしたの仕事   ぶつぶつ云われんようにしっかり頑張ろな

ニンマリ顔して   千年もたてば炭になるダイヤをのせる掌より

ふしくれだらけで適当に爪がのびている手の方が

殻を   りんりん破って行けるんや

夏雲を食べて臓腑を洗い

青い風に言葉を晒して

さあ、おまはん

きばって行こか!


・・・・・

読者会で出会った頃は松葉杖をつき、印刷の仕事をしながら詩を書いておられた。

岸本さんのお家で何度か読者会もあったなぁ。遠い昔のことだ。階段を這って上がっていく彼の姿を思い出す。

阪神大震災後しばらくして仲間と訪ねたら、棚から崩れ落ちた大量の蔵書に文字通り埋もれ、

「必死でストーブの火を消した、死にかけた」

と言っておられた。

・・左の手足が不自由で小中学校に通えず、独学で文字を学び、10代から詩作を始める。松葉杖をついて世界中を旅した。字の読めない子どもたちを支援しようとネパールに学校を作り就学支援を続けている・・


一時期、身近に見てきた彼の小さな身体。

へんな話題で、身体を揺らしながらキャハハハと顔じゅうくしゃくしゃにして笑い弾ける姿。


すっきりと晴れわたった青空を、こころ深くにきっちりしまい込んで生きてこられたのだな。