はらっぱ日記

里山・はらっぱ育ちのもーちゃんです

あの娘にあった!

マイコレクションから

月に一度の読書会に行こうと、阪急の中山駅に降り立った。その折エスカレーターですれ違った若い女性の横顔に独特の気配を感じ取って、わたしはホームに上っていく彼女を眼で追いかけずにいられなかった。
ホームに着いた彼女はすたすたと歩いて遠ざかる。わたしは追いかけていって、
「あの、あのー、○○作業所でいっしょに働いてたよね」
と大きな声を出した。その背の高い娘さん(Oちゃん)は振り返り、はいと返事し、こちらへすぐ引き返してきてくれた。
独特の気配を持つあの娘(こ)が、私の顔をきちんと見てくれていた。ショートカットのあっさりした髪型はかわらないけれどあの娘は落ち着いた若い女性になっていた。
もう10年以上も前のこと、わたしは教師を辞め、小さな障害者の作業所に手伝いに入って昼食を作ったりしていた。そのとき、作業所に指導員として時々来ていたのがOちゃん。不登校だった彼女は定時制高校へ入学し、そこで身体に障害のあるRちゃんや(今車いす青年の奥さんになっている)Yちゃんとクラスメイトとしてなかよくなり、卒業後Rちゃんは作業所の利用者として、またOちゃんとYちゃんは指導員的な感じで作業所にかよっていた。高校の友達関係が、卒業後もうまくつながってより強いかかわりを生んでいたんだ。
Oちゃんはいつも上から下まで黒づくめの服装で、人を見るときは顔を伏せるように下げ気味にして、ななめからそっと相手を見るような無口な女の子だった。話し方もぽつりぽつり最小限の言葉で話す。芯が強そうな眼をしていて、そのころから手話を習い、手話通訳もできるようだった。
今日会ったOちゃんはまっすぐわたしの眼を見て、はっきり受け答えをしてくれる。Oちゃんに会えてすごくうれしいとわたしが言うと、Oちゃんは「わたしもうれしいです」とはっきり私の顔を見て言ってくれた。
Oちゃんは泊まり勤務で一人暮らしをしている若い障害者Sちゃんのお泊まり介護を終えて家に帰るところだったんだ。Oちゃんは自分を人前に出すときは小さな隙間からちょっとだけ出すといった感じだったのにきょうは堂々と眼をあげて、思慮深い自信ある大人の目をしていたんだ。とてもうれしかった。
何て柔軟な成長をされたんだろう!
きっとこの作業所関係の仕事に自分自身の生きるべき場所を確かに見つけたんだろうな。
人がいろいろなことをうまくクリアして、行くべき所にきちんと到達していくって素敵だ。
あの娘は素敵な女性になったんだなあ!

<写真・・・ビー玉やミニスーパーボール>
   わたしがいろんなところで集めたものだよ。